司馬懿日記

横山三国志好きの我が家の軍師と行った、劇や映画の記録を残しておくための備忘録ブログです

イキウメ『天の敵』(東京芸術劇場シアターイースト)

軍師曰く、前川知大はホラーの演出がうまくなっている気がする。

今回の劇の元ネタとなった短篇劇よりもおもしろくなっている、そうだ。話自体は短篇のときと変わらず、長くなったぶん内容が深くなったわけでも登場人物個々人の掘り下げができたわけでもない。ただ、一見関連のなさそうな話をいくつか提示しておいて、最後にまとめてテーマっぽいものを感じさせるやりかたが『奇ッ怪』を経ることでずいぶんと上達した印象を受ける、らしい。

もともと前川の持ち味は、スイーツ風味+ドラえもんライクなすこし不思議、であり、女子力高めのふわっとした話の中になんとなく影のように見えるテーマ性的なものが、ただのスイーツ話でもなく、かといってマニアしか褒めないコテコテのSFでもない、前川独自の良さ/売りとしてごく初期から確立されていた。

ところが、ここ数年の前川作品は、あまり本人の作風とあってないブンガク風味に傾倒しており、新潮群像あたりを読んでいそうな爺さんが喜びそうな手垢のついた古くさいモチーフを使った挙句、ではそれらのモチーフが深い人間性を描いているとかというとそんなこともなく、旧来の前川作品にあったふわっとした良さを打ち消しているだけという体たらくだったのだが、やっと肩の力が抜けていい按配のところに着地したようにも見える(ところで、かれこれ10年ほどこの劇団を見ているが、客席からスイーツ女子勢が減り筋の悪そうなおっさんが増えたように軍師は感じているようだ)。

次の劇がすこし楽しみになった、そうだ。

 

2010年に上演された、『図書館的人生 Vol.3 食べもの連鎖』、『人生という、死に至る病に効果あり』を長編化したもの。基本的に軍師は同じ話を観ることがないので、2010年に観てるけどどうするのかな?と思ったけど、珍しく観ると言ったので、行ってきた。

余談だけど、同じ『図書館的人生 Vol.3 食べもの連鎖』の中の、「いずれ誰もがコソ泥だ、後は野となれ山となれ」の万引き犯だった安井順平がすごくすごく好き。ぜひ次の機会はこれを長編化してほしい。偶然、会場で軍師のご友人夫妻とばったりお会いしたので、観劇後に夕食。浜田信也がなんか格好良くなってない? と女子トークも弾んだ。最近こういう女子会のノリがなくなってきたので、新鮮。

次回は『散歩する侵略者』なのでこちらは観ないのでチケット取らず。一人で行ってもいいかなと思ったけど、三茶なのでやめ。

映画もあって忙しいのだと思うけど、完全新作が観たいなー。